テレビの向こうではなく、自分の目の前で歴史が動いていく。
そんな経験をしたことがある人は多くありません。
太田先生が研究しているのは、中世エジプトを中心とするマムルーク朝の歴史です。研究のため、2008年から2011年までエジプトのカイロ大学に留学し、何百年も前に書かれたアラビア語の写本を読み続けてきました。
研究室で向き合うのは、印刷された本ではありません。何世紀も前の人々が手で書き残した資料です。そこから当時の社会や人々の考え方を読み解いていきます。
ところが、留学生活の最後の年に大きな出来事が起こります。
2011年の「アラブの春」です。
民主化を求める運動が中東各地に広がり、エジプトでも大規模な政変が起きました。歴史資料の中で学んできた社会の変化を、自分自身がその渦中で体験することになったのです。
帰国後、結婚や出産を経て、研究から離れざるを得ない時期もありました。
「自分の研究は社会の役に立つのだろうか」
そんな問いに向き合い続けた結果、研究そのものを見直すようになります。
研究者だけの世界で完結するのではなく、もっと社会と対話できる研究の形はないだろうか。
現在は、保育園の子どもたちや保護者を対象にしたワークショップを毎年企画しています。昔の地図や双六、デジタルアーカイブの資料を使いながら、「昔の人は世界をどう見ていたのか」を一緒に考えます。
最近特に関心を持っているのは地図です。
地図には場所だけではなく、その時代の人々が何を重視し、何を記録したかったのかが表れます。
私たちが日々見ているGoogleマップも、百年後には貴重な歴史資料になっているかもしれません。
中世の写本から現代のデジタル地図まで。
太田先生は、人々が世界をどのように理解し、記録してきたのかを追い続けています。
もっと知りたい方へ:この研究者についてさらに詳しく知りたい方は、研究業績や経歴をまとめた researchmap もご覧ください。
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